2019年3月11日月曜日

最適な「緩衝材厚さ」 とは

裁量で包装設計を行っていませんか?
包装設計を見直すことで、輸送費を大幅に削減できるかもしれません。

最適な包装設計は、物流データから理論的に求めることが出来ます。


1.包装設計の目的


包装設計の目的には主に下記の2つがあります。
 ・内容品の保護
 ・物流コストの削減
貨物は内容品が破損することなくエンドユーザーへ届けられる必要があり、
内容品を保護するために緩衝設計がなされます。
製品に発生する衝撃加速度を小さくするためには、大きな梱包箱を用意し、多量に緩衝材を封入すればよいのです。

一方で、物流コストを削減するためには、
箱の大きさを小さくすることで一回の運搬量を増やし、
配送回数を減らすことが必要になります。
箱の大きさを小さくし、緩衝材の使用量を少なくすることで、
緩衝材の材料費を削減することにも繋がります。

以上より、内容品の保護、物流コスト削減を考慮すると、
内容品に発生する加速度が許容加速度を超えない範囲で
可能な限り貨物の大きさを小さくすることが、
最適な包装設計であると考えることが出来ます。


2.緩衝とは

緩衝材が変形することによるエネルギー吸収量は、
落下前の貨物の位置エネルギーと等しく下記で表されます。
  Ep=mgh [ J ]
位置エネルギーを吸収する緩衝体の体積は、
受圧面積をA、緩衝体厚さをtとしたとき、
  V=At
となり、緩衝材1cm3当たりに吸収するエネルギー量は
   ε=Ep/V
で表されます。
このことから、εが大きくなれば、緩衝材の使用量を減らすことができることになります。

図1 εとVの関係
 

3.最適な緩衝材寸法

力学的エネルギーは、縦軸を力F、横軸を変位xとしたとき、
Fx図の面積(図2 左下)で表され、
これは緩衝部全体(V=At)の変形による吸収エネルギー、
つまり貨物落下前の位置エネルギーEpに相当します。

また、受圧部全体に加わる力をFとすると、
単位面積(1cm2)に加わる力(応力)は
  σ=F/A[N/cm2]
となります。また、厚さt[cm]における変位x[cm]は、
厚さ1[cm]における変位として
  S=x/t
で表します。Sは一般的にひずみと呼ばれます。
この時、縦軸を応力σ、横軸をひずみSとしたグラフを描くと
応力ひずみ曲線下の面積がε(1cm3当たりに吸収するエネルギー)です。 

図2 εとは

 
Gファクターを
  G = a/g ( a:製品発生加速度、g:重力加速度)
と定義すると、最大応力は
  σm = F/A = mgG/A
と表され、下記式に変形できる。
  mg/A = σm /G  ・・・①
また ε= Ep/V = mgh/At より
  t = mgh / εA  ・・・②
となり、①、②より
  t = σm h / εG
となる。ここで C=σm/ε (緩衝係数)と定義すると
緩衝体の厚さが
  t = Ch/G
で表されます。
 
図3 緩衝係数Cの求め方
 
そこで、物流中に想定される最大落下高さをh、
製品の許容加速度をGgとすると、必要緩衝材厚さは下記になります。
  t=Ch/G
この式から、Cが小さいほど必要緩衝材厚さが小さくなる
つまり梱包貨物の大きさを小さくすることが出来ます。
ここで、σ、εが変化すればCの値も変化するため、
応力ひずみ曲線の任意の点からCを求める必要があります。
そこで、図4右下のように、ここでは例として5点のCを計算します。
 
各点における緩衝係数は、図4の左下のように求まります。
そして、横軸を応力σ、縦軸を緩衝係数Cとしたグラフを描くと
右上の図のような曲線が描けます。
緩衝係数が小さいほど、梱包材の大きさを小さくすることが出来るため、
ここでは曲線の最小値であるC3、そしてその時の応力σ3を採用します。
そのC3、σ3から、最適な緩衝材厚さt、その時の受圧面積Aが次式で求まります。
   t = C3h/G
  A= mgG/σ3
 
 
図4 最適な貨物の大きさ決定
 
 
 
4.緩衝材料による違い
 
応力ひずみ線図から緩衝材の性質がわかります。
図5の応力ひずみ線図の曲線aは、ひずみが大きくなるにつれ、
曲線の傾きが大きくなります。
これは、圧縮するにしたがって硬くなる性質を持ち
尖った緩衝材や、通気性のある気泡緩衝材などがある。
 
それに対し、cの曲線は圧縮するに従い柔らかくなる性質を持ち、
段ボール・紙といった、座屈系緩衝材が挙げられる。
 
また、曲線bは応力がひずみに比例していることから、
弾性を持ったバネに近い緩衝材であることが分かる。
 
 
図5 応力ひずみ線図からわかる特徴
 
 
5.緩衝性能評価手法
 
緩衝性能の評価方法はJIS Z 0235 - 2002に規定されており、
規格に準拠した試験機として弊社ではACSTを販売しております。
 
ACSTの特長は、サンプル上方より重錘を落下させることにより、
落下衝突時のサンプル圧縮変位、重錘発生加速度を計測します。
重錘に発生した加速度と、サンプル・重錘の情報から、
サンプルに発生する応力を計算します。
また磁歪センサによる変位計測により、
サンプルサイズからひずみを求めます。
この応力、ひずみを用いて、緩衝係数を解析することができ、
梱包貨物の最適緩衝材厚さを求めることができます
 
図6 緩衝性能評価方法
 
 
緩衝材料評価試験装置 ACST-200

 

詳細は弊社HPをご確認下さいませ。
 
神栄テストマシナリー㈱ HP
 
神栄テストマシナリー
事業開発部 波夛野 諭志

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